アイカツ!総括! その2
現実では努力しても何も得られないばかりか、時には間違った方向に進んでしまうこともある。
アイカツ!に置いてはその可能性はなるべく排除され、努力する事=正しい事と感じられるように作られている。
具体的には、騙し合いや足の引っ張り合い、等の人の悪意が排除されている事。そして正しい道を言葉や行動で示す、先輩や大人達の存在だ。
・チャレンジできる環境づくり
アイカツ!のキーワードの一つに「セルフプロデュース」というものががある。アイドル自身がステージの衣装や、活動、練習方針に至るまで、一定のオファーやカリキュラムはあるものの、自己判断で決めて行くというものだ。
活動にアイドルの自由が許される、と.いう事であるが、自由には責任がついて回る。例え望んだ結果が得られなくとも、不利益を被っても、自分で決めたのだから自己責任という事だ。
これは一面では当たり前とも言えるが、例えば上記のような騙し合いや足の引っ張り合いが横行し、先人も道を示さない世界でセルフプロデュースを要求されるとどうなるか。それでもうまくゆく人はうまくゆくだろうが、足をすくわれ、間違った道を歩んでしまう人も現れるだろう。セーフティネットがない中の自由とは過酷なものだ。
アイカツ!においては、オーディション等で勝敗が決した場合でも、敗者は悔しさを表明する事はあっても、基本的に勝者を賞賛し、おとしめたりはしない。
一時ゴシップ記者というキャラも登場したが、さほどストーリーには影響を与えず退場している。
そして、先輩や大人達は、主人公達が壁にぶつかったり迷った時、先人として道をしめし、突破する手助けをする。時に突飛な課題を課すような事もあるにはあるのだが、それも自己利益ではなく、悩める本人やアイドル業界全体の為の事であるとなるべく肯定的に描かれている。
ジョニー別府というキャラクターがいる。彼は主人公達が所属するアイドル学校、スターライト学園でダンスを教える教師、という立場をメインにしつつ、その他様々な形でアイドル達を助けてくれる存在だ。
「前向きなお願いはいつでもウェルカム」と、車の運転はもちろん、練習に差し入れして助言をくれたり、アイドルが謝罪をしないといけない時に同行して、一緒に頭を下げてくれる(いつもはジャージ姿だが、スーツを着て!)
アイドル達は、大人達に混じって仕事をするプロではあるが、同時にまだ未成年で、社会経験も少ない子供でもある。周りの大人達が、しっかり大人の役割を果たしてくれる事で、初めて存分に自分の可能性にチャレンジする事ができるのだ。
・SHINING LINE
主人公、星宮いちごは、神崎美月というアイドルに憧れ、アイドルを目指すようになる。そしてその神崎美月も、マスカレードという別のアイドルに憧れアイドルになったことが描かれた。そして、二代目主人公である大空あかりは、初代主人公である星宮いちごに憧れ、アイドル活動をスタートする。
そこで描かれるのは、憧れた先輩達も、かつては自分と同じように誰かに憧れる立場だったという事。そして自分もいつか先輩という立場になる事。「憧れ」という名のラインで皆が繋がれて来たという事だ。
さて神崎美月はまだ未成年であるが、その憧れのマスカレードは既に大人になっている。マスカレードは二人組で、一人はアイドル学園、スターライト学園の学園長となった。そしてもう一人は、主人公、星宮いちごの母親である。
そこで描かれるのは「大人」と「子供」を繋ぐもう一本のラインだ。大人達、親達もかつては子供であり、そして子供達もいつか大人になり、親になるかもしれない、という物語だ。
アイカツ!は、迷いながら努力する新世代と、それを教え導く先人達との繋がりの物語であった。
アイカツ!は「優しい世界」と言われることがあるが、その為には、大人が大人の役割を、先輩は先輩の役割をしっかりやることが必要だ。それは決して完璧にやらなければならないという事ではなく、皆始めは子供で、素人で、迷いながら成長してきたんだよ(そして今も迷いながらも頑張っている)という事を現役世代に見せろ、という事だと思う。
このテーマを描けた事が、アイカツ!を子供向けとしても、大人の試聴にも耐えるアニメした一因であろうと思う。(余談だが、この繋がりと世代交代のドラマが最大に結実したのが、「劇場版アイカツ!」だ。)
今わたし達の空に 手渡しの希望があるね
受け取った勇気でもっと 未来までいけそうだよ
もらうバトン キミとつなぐ光のライン
あこがれのSHINING LINE* チカラにして
「アイカツ!」4代目OP「SHINING LINE*」より